おせち料理の由来と歴史、一つひとつの意味を知ろう!

マナー・食文化

2021年8月23日

おせち料理

お正月といえばおせち料理。

毎年のように作ったり食べたりしていても、おせちの歴史や由来をご存じの方は少ないのではないでしょうか。

またおせち料理には、一つひとつに意味があるのですが、すべて答えられる方はあまりいらっしゃらないのでは?

今回は、おせち料理がお正月に食べられるようになったきっかけや変遷、料理の意味などをまとめてご紹介したいと思います。

おせちはお正月に限らず季節の節目にいただく料理だった!

小皿にのったおせち

知っているようで知らない、おせち料理。

まずはその始まりから紐解いていきましょう。

日本では奈良時代の宮中料理が始まり

「おせち」を漢字で書くと「御節」となり、暦上の「節句」、つまり季節の節目を意味していました。

これは、唐の時代に中国から伝わった人日(一月七日)、上巳(三月三日)、端午(五月五日)、七夕(七月七日)、重陽(九月九日)という、五つの節句が由来となっているのだとか。端午や七夕などは、現在でもそのまま残っていますね。

奈良時代になると、これら季節の節目となる「節句」に「節会(せちえ)」という宴会を催して、神様に感謝するという風習が始まります。

この時にお供物として作られたのが「御節供(おせちく)」と呼ばれる料理で、現在のおせち料理の起源であるとされています。

おせちは元々、五節句のお祝いのための宮中料理だったというわけですね。

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一般市民に広まったのは江戸時代から

江戸時代イメージ

宮中料理だったおせち。言ってみれば上流階級だけの風習だったわけです。

ところが江戸時代になると、この「五節句」が江戸幕府によって公式行事として制定されます。

このお触れを契機に、一気に「節会」や「御節供」が一般庶民の知るところとなりました。

しかし、裕福ではない一般庶民が「五節句」の度に豪華絢爛な料理を用意するのは、簡単なことではありません。

次第に、五節句の中で最も大切とされる「人日(一月七日)」に料理を用意するようになり、それが「おせち料理」として現代まで受け継がれているのです。

重箱に詰められるようになったのは明治以降

重箱に詰められたおせち料理

宮中料理を起源とするおせち料理は、神様へのお供物として食べられていた当時はお椀やお皿を用いた「膳」として供されていました。

それが現在のように重箱に詰められるようになったのは、明治時代になってから。

その理由は、神様への感謝から年始のお祝いとしての意味合いが濃くなるにつれ、重箱を重ねることで「幸せや福が重なる」という願いが込められていったのではないかと言われています。

さらに重箱に積んで置いておくことで保管のためのスペースも省略され、家族やお客様に振舞いやすいという現実的なメリットもあったようです。

現在ではシンプルな一段ものから豪華な六段ものまで、さまざまな段数のおせち料理がありますが、一般的には四段重ね、もしくは五段重ねが正式だとされています。

戦後には、デパートやスーパーでも売られるように

熨斗掛けされた重箱のおせち料理

第二次世界大戦以降になると、デパートなどで見栄えのいい段重ねのおせち料理が販売されるようになり、一段と豪華なイメージが広まります。

そして意外にも、この頃になって「おせち料理」という呼び方がようやく一般的に使われるようになったのだとか。

起源は奈良時代と古いおせちですが、広く定着したのは戦後というわけです。

意外に知らない、おせち料理の「ダメ。ゼッタイ。」

絶対ダメ

おせち料理といえば、日持ちのする料理が多いですね。

その理由をご存じでしょうか。

おせちは、神様と女性に休んでもらうための料理?

火のついたかまど

なぜ日持ちのする料理が多く使われているのでしょうか?

それは、平安後期からある「火の神(荒神)を怒らせないよう火は使わない」「歳神様を迎えて共に食事を行う正月は台所を騒がせてはいけない」といった風習からきているそうです。

お正月に火を使うのはご法度というわけです。

そしてもう一つ、「日ごろ炊事をしてくれている女性が、正月三箇日は休めるように」という意味もあるのだとか。

現在でこそ夫婦共働きの世帯も多く、家事=女性という認識は薄まりつつありますが、おせち料理が爆発的に広まった戦後の高度経済成長期は、まだまだ家事は女性の仕事というとらえ方が一般的だったのですね。

包丁を使うと、良縁まで切ってしまう?

鯛を包丁で切る様子

ものを切るためにある「刃物」はよいご縁まで切ってしまうということから、正月に包丁を使うのは縁起が悪いとも言われています。

1月11日の鏡開きの時、包丁を使わずに手や木槌などで鏡餅を叩き割るのは、この風習の名残かも知れませんね。

ちなみに、「怪我することなく無事に一年を過ごせますように」という願掛けの意味もあるのだそうです。

どちらも使えるからといって、祝箸を取り箸代わりに使うのはダメ!

祝箸

おせち料理を食べるとき、両端が先細りした変わった形のお箸を使いますよね。

これは「祝箸」といって、片方は神様、もう片方は人が使用する「神人共食」を意味しています。

こんなところにも、おせち料理が元々が「神様へのお供物」だったことの名残がうかがえます。

くれぐれも、ひっくり返して「取り箸」に使用しないよう、注意してくださいね!

現在ではライフスタイルに合わせたおせちが主流!

洋風おせち

最近では、和食だけでなく洋食や中華、和洋折衷など、さまざまなタイプのおせち料理が作られています。

大家族のための五段重ねの豪華なおせちもあれば、夫婦だけでちょうどいい一段のシンプルなおせちもあります。

塩分や糖質を控えたものやマクロビオティックなど、ヘルシー志向のおせちも人気なのだとか。

デパートやスーパーだけでなく、飲食店でもオリジナル商品を販売していて、お店はもちろんインターネットでも気軽に注文することができます。

家族構成やライフスタイルに合わせて、みんなが笑顔でお正月を過ごせるようなおせち料理を取り入れたいですね。

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おせち料理には意味がある

以上おせち料理の歴史や変遷を紹介してきましたが、おせち料理には実は一つひとつに意味があります。

最近では、冬休みの宿題に出す小学校もあるのだとか。

お子さんに聞かれても困らないよう、ここで紹介したいと思います。

おせちって、何段が正解なの?

おせち料理イメージ

デパートやネットでは、コンパクトな一段から豪華な五段までさまざまなおせち料理を見かけますが、正式な段数は・・・実は諸説あるのです。

四段もしくは五段を正式とする説が多いのですが、最近では四段が主流のようです。

これは完全な数を表す「三」の上にもう一段重ねた数ということにちなんでいるのだとか。

上から一の重、二の重、三の重、与の重、となります。「四」は「死」を連想させる忌み数字のため「与」の字を使い、呼び方も「よのじゅう」なので注意しましょう。

おせち料理の一つひとつの意味は?

おせち料理には、和食の懐石料理や西洋料理のフルコースのように一連の流れがあります。

大きく分けて祝い肴、口取り、焼き物、酢の物、煮物の5種類。

それぞれ意味があり、どの順番で重箱に詰めるのかも決まりがあります。

一の重

数の子、田作り、黒豆

一段目には、慶事にふさわしい祝い肴と、酒の肴になる口取りを入れます。

数の子

数の子はニシンの卵のこと。

数万粒というたくさんの卵をつけることから、子孫繁栄を願う縁起物とされています。

「二親(=両親)」と語呂合わせもできますね。

田作り

カタクチイワシの稚魚を干して、醤油や水飴、砂糖などで飴炊きにしたもの。

カタクチイワシは農作物を作る際の肥料として使われたことから、五穀豊穣を願って食べられています。

黒豆

真っ黒に日焼けするほどマメ(=豆)に働き、健康に暮らせるようにという願いを込めて食べられています。

あえて表面がしわになるように煮て「シワができるほどの長寿」を願う意味もあるのだとか。

たたきごぼう

ごぼうは地中の奥深くまで根を張ることから、家の基礎が堅牢であるように、家族の土台がしっかりするように、といった願いが込められています。

また、家業が土地に根付に繁栄しますようにという意味もあるそうです。

紅白かまぼこ

飾り切りで鶴や松などの縁起物にかたどられたかまぼこには、赤には魔除け、白には清浄の意味があるそうです。

伊達巻

「伊達=洒落た・見栄えの良い」という意味を持つ伊達巻。

巻物に似ていることから、知識が身に付きますようにとの意味があります。

昆布(こぶ)巻き

よろ「こぶ」という語呂合わせから、縁起が良いとされている昆布巻き。

こぶを「子生」とも書いて、子孫繁栄の願いも込められています。

栗きんとん

干して殻と渋皮を取り去ったものを「かちぐり」と呼んでいたことから、出陣や祝勝に用いられた縁起物です。

そして、きんとんは漢字では「金団」と書くことから、財宝にたとえて金運を呼ぶとも言われています。

ちょろぎ

真っ赤に染められた漬物として食べられることが多いちょろぎ。

漢字で「長老喜」「千世呂木」と書けることから、長寿を祈願しています。

錦玉子

上半分の黄身の部分が「金」、下半分の白身の部分が「銀」の二色(=にしき)に見えることから、語呂合わせで「錦」と呼んで縁起物とされています。

二の重

鯛の焼き物

二段目には、縁起がいいとされる海の幸を中心とした焼き物を入れます。

鯛の姿焼き

祝いの席に欠かせない鯛は、「めでたい」という語呂合わせだけでなく七福神の恵比寿様も手に持つ縁起物。

紅白の色合いや傷みにくいことも、お祝い事で重宝される理由のようです。

ぶりの照り焼き

ぶりは、大きさによってワカシ、イナダ、ハマチ、ワラサなど名前が変わる出世魚です。

立身出世を願う縁起物として食べられています。

車海老艶煮

茹でると丸くなる姿が腰を曲げたお年寄りに見立てられ、長生きできますようにという願いが込められています。

火を通すと身が赤く美しくなることから、縁起物や魔除けの意味もあります。

煮蛤

蛤の殻は、同じ貝のものでないと左右がピッタリと揃わないことから、夫婦円満を象徴しています。

三の重

お煮しめ

三段目には、山の幸を中心とした筑前煮やお煮しめを入れます。

煮物は様々な具材を一緒に煮ていることから、家族一緒に仲良く結ばれますようにという意味があります。

れんこん

大きな穴があいていることから、将来の見通しがきくようにという願いが込められています。

また、仏教では極楽浄土の池に蓮の花が咲くことから、穢れのないことも表しているそうです。

里芋(ヤツガシラ)

親芋の周りに子芋、子芋の周りに孫芋と、1つの種芋からたくさんの芋がつくことから、子孫繁栄を願う意味があります。

ヤツガシラは「八つ頭」と書いて、末広がりの「八」や人の「頭」となって出世するように、という意味もあるようです。

くわい

空に向かってまっすぐな芽を出すことから「芽出たい=めでたい」という語呂合わせや、立身出世の意味があります。

たくさんの子球がつくことから、子孫繁栄を願う意味もあるようです。

手綱こんにゃく

真ん中がねじれている手綱こんにゃく。武家社会の頃から「手綱を締める」ということで、戦いに備えるという意味があったのだとか。

そして結び目には良縁や家庭円満といった願いも込められています。

与の重

紅白なます

四段目には、日持ちのする酢の物や和え物を入れます。

紅白なます

大根と人参の色合いを紅白に見立てた縁起物の紅白なます。お祝いの際の水引にも見えることから、平安や平和への願いも込められています。

どちらも根菜で、深く根を張って家族の土台をしっかりと支えられるようにという意味もあります。

菊花かぶ

菊は国花でもあることから、繁栄や健康を願う縁起物とされています。

邪気払いや長寿を祈願するという意味も込められているそうです。

小肌栗漬け

小肌もぶりと同じように、大きさによって「シンコ」「コハダ」「コノシロ」などと名前が変わる出世魚。

立身出世を願って食べられています。

三段や五段の時はどうするの?

三段のおせち料理

三段にする場合には、一の重には祝い肴と口取り、二の重には酢の物と焼き物、三の重には煮物を入れるのが一般的です。

五段の場合、五の重には家族の好きなものや予備の料理を入れるそうです。

家族や親戚などたくさんの人たちが集まるお正月ならではの工夫なのかも知れませんね。

また、古くは「控えの重」とも言われ、繁栄のための伸びしろ、または福を詰めるための場所として空にしておいたこともあるそうです。

おせちに願いを込めてお正月を祝おう

おせち料理は、味だけではないさまざまな願いが込められた日本ならではの食文化。

その歴史や意味を知って、ぜひお子さんにもしっかりと伝えてあげたいですね。

 

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